※本記事は『VIVANT』の登場人物や場面に触れています。
ドラマ『VIVANT』を見ていて、物語の展開とは別のところで、強く心に残った言葉がありました。
作中に登場する「AIハヤト」に、人格を持たせているという説明です。
AIハヤトは、別班のスーパーコンピューターとして登場します。その声を声優の高山みなみさんが担当していることも、番組公式サイトで紹介されています。番組公式サイト
ほかの視聴者がこの説明をどう受け取ったかは分かりません。物語の設定の一つとして、そのまま聞き流した人もいるでしょう。
でも、私はそこで立ち止まりました。Everlinkを考える中で、「人の経験や価値観をAIが受け継ぐとはどういうことなのか」という問いに、繰り返し向き合っているからです。
AIに名前があり、話し方に特徴があり、返答から性格を感じる。同じ情報を伝える場合でも、「何を言うか」に加えて「誰が言っているように感じるか」が、会話の受け取り方を変えていきます。
私がハヤトを見て気になったのは、その点でした。人は、どのようなやり取りから、相手に人格があると感じるのでしょうか。
もちろん、人格を感じさせる描写があることと、AIが意識や感情を持っていることは別の話です。それでも、私たちがAIとの関係を考えるうえで、見過ごせない問いだと思いました。
もう一つ、印象に残った場面があります。
乃木の姿や声をAIで再現し、薫とテレビ電話をする場面です。私はこれを見て、画面越しに誰かを「本人だ」と受け止めるとき、自分は何を手がかりにしているのだろうと考えました。
顔、声、話し方、会話の内容。そして、普段からその相手を知っているという安心感。
日常の会話では、それらを一つずつ確かめることはほとんどありません。見慣れた顔と聞き慣れた声があれば、ごく自然に会話を始めます。
ドラマの描写だけで、現実の技術が同じことをどこまでできるかは判断できません。ただ、この場面は、私たちが誰かを信頼するときの手がかりについて考えるきっかけになりました。
AIハヤトから感じたのは、会話を通じて生まれる存在感です。乃木のテレビ電話から感じたのは、姿や声が生む本人への信頼です。
Everlinkで人の経験や価値観をAIとして扱うなら、その両方に向き合う必要があります。
本人に似た声で話せても、その人が大切にしていることを無視して答えるなら、本人の代理として安心して任せることはできません。反対に、顔や声の再現がなくても、本人が残した経験や判断の理由が伝わることで、その人の考えが誰かの役に立つことはあるはずです。
だから私たちは、見た目や声の再現とともに、何を根拠に答えているのかを大切にしたいと考えています。本人が語ったことなのか、残された情報からAIが推測したことなのか。分からないことを、分からないと言えるかどうかも含めてです。
正直なところ、AIハヤトを見て「こんな相手と実際に話せたら面白いだろうな」とも思いました。
しかし、好きなキャラクターや、よく知る人の声で返ってくる言葉には、文字だけの回答とは違う重みがあります。AIが生成した発言が、その人自身の意見として受け取られることも考えなければなりません。
本人が利用に同意していること。相手にAIであると伝わること。どこまで答えてよいかを本人が決められること。そして、必要なときには止めたり、訂正したりできること。
私たちは、こうした条件も含めてPersona AIを設計していきたいと考えています。
『VIVANT』を見たことだけで、AI人格が社会に受け入れられたとまでは言えません。それでも、私にとっては、日々考えていた問いにドラマの中で出会った体験でした。
AIが誰かの代理として話す場面で、相手はその言葉を何として受け取るのか。
その問いを、これからもEverlinkを作る中で考え続けていきたいと思います。
